総角 その一〇〇

 相手の女房は、



「こんな話を聞きましたわよ」



 と仲間の女房たちにしゃべった。大君はそれを耳に挟み、とてもびっくりして胸も痛み、



「もうおしまいだわ、身分の高い人との縁談が整うまでのほんの一時の慰みに中の君へ通っていらっしゃったのだろう。さすがに薫の君の思惑を気になさって口先だけは愛情深そうにおっしゃったのだ」



 と考えに行きつくと匂宮のつれない仕打ちについてとやかくその内情を知る余裕もなく、ただただ身の置き所もない心地がしてうちしおれて泣き伏してしまった。


 大君の体とともに弱り切っている心をそんな話を聞いてはいよいよこの世に永らえたいとも思わない。個々の女房たちはそれほど気兼ねをするような人もいないが、それでもこんな成り行きを何と思っているだろうかとその手前も決まりも悪くて辛いので、何も聞かなかったふりをして寝ているのだった。

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