総角 その九十九

 薫の君のお供をしてきているうちにこちらの若い女房に言い寄っていつの間にか深い仲になった家来があった。その二人の内輪話に、



「匂宮は宇治へのお忍び歩きを禁止されていらして宮中にずっと閉じこもっていらっしゃるのだよ。夕霧の右大臣の姫君と結婚させられるような様子だ。右大臣のほうでは長年のご希望なのですらすらと事が運んで年内にも婚儀があるということだ。匂宮は気が進まなくて渋っていらっしゃり、宮中あたりでももっぱら色事に熱中されて帝や中宮のご意見も受け入れられず、乱行がやみそうにもないようだ。それに比べてうちのご主人様ときたら相変わらず何とも不思議なほど世間の男とは変わっておられてあまりにも生真面目過ぎてお堅い一方ときていらっしゃるのでみんなからもてあまされていらっしゃるのだよ。こちらへこうしてお通いになることだけが驚き、よほどこちらの姫君にご執心なのだろうと噂でもちきりさ」



 などと話すのだった。

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