総角 その九十八

 薫の君はただもう悲しくてならず、一体容態はどうなることやら、これまでになく京はやさしい様子なのもかえって不吉な感じがして胸がつぶれるように思い、言われるままに側近くに寄って様々なことをしみじみと話す。



「苦しくてお返事ができません。少し気分がおさまりましてから」



 と言う声もいかにもか細く弱々しいので、薫の君は限りなくいたわしくてならず、嘆息を洩らして控えている。それでも何のなすすべもないままにこうして無為に長居もできないので、ひどく気がかりで後ろ髪を引かれる思いで帰った。



「こんな山里のお住まいではやはり何かと不都合だったのです。いい方向に場所を変えてご養生なさるということにして、それにかこつけて便利な京のほうへお移ししましょう」



 など弁たちに話して、山の阿闍梨にも心を入れて祈祷に励んでもらうようよく言いつけて出立したのだった。

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