総角 その九十七

「いつもにましてこうしてご病気なのが心配のあまり、不安に駆り立てられて夢中で飛んできましたのに、こんなふうに他人行儀に外に放り出しておかれるのはあんまりひどいではありませんか。こうしたご病気中の御看護も私の他に誰がしっかりして差し上げられますか」



 などと言い、弁の君に相談して病気平癒の修法などをいろいろ始めるように命じる。大君はその様子を耳にしてとても見苦しくいたたまれない思いで、できることならいっそ自分から死んでしまいたい身なのにと薫の君のお節介を迷惑に聞く。しかし遠慮なく思っていることをそのまま口にするのもはしたなく、薫の君が大君に永らえてほしいと念じている気持ちはさすがに心にしみてありがたく思っていた。


 翌朝、薫の君が、



「少しは気分もよくなったでしょうか。せめて昨日のようにお側でお話したいのですが」



 と言うと、



「病気が長引いておりますせいか、今日はとても苦しいのです。でもまあ、こちらへ」



 と御簾の中から伝えるのだった。

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