総角 その九十六

 大君は、



「中の君ご自身は別に何ともおっしゃってはいないようですが、亡き父宮のお諫めになられたことはこういうことだったのかと思い当たりますのが可哀そうでなりません」



 と泣く様子だ。薫の君はとても気の毒で自分まで顔向けできない気がして、



「男女の仲というものはいずれにしましてもなかなかぴったりと一つにおさまることは難しいものですが、そういうことには何の経験もないあなた方には一途に恨めしいとお思いになることもございましょうが、そこはつとめてお気持ちをなだめて御辛抱ください。ご心配なさるようなことは決してあるまいと思いますから」



 など他人の身の上まで世話を焼いている自分に一方ではふっと変な気がする。


 大君は夜になるといつもとても苦しそうにしていたので、他人の薫の君が病人の側近くにいるのを中の君が気を揉んでいるらしいので、女房たちは、



「やはりいつもあちらのお部屋に」



 と言うのだった。

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