総角 その九十一

「自分があまりに変わり者なのだろうか。またはこうなる前世からの約束事なのだろうか。八の宮が生前しきりにあれこれと姫君たちのことを心配していらっしゃった様子もお気の毒で忘れられず、それにこの姫君たちのご器量屋お人柄も優れていらっしゃるのに、格別お幸せにもなれないまま零落なさったりするのがいかにも残念なあまりに何とかして人並みのお暮しをなさるようにと我ながらおかしいほどお世話申し上げていたところへあいにく匂宮も本気で仲立ちするようにしつこくお責めになったので、自分は大君を愛しているのに大君は中の君を譲ろうとなさるのが心外で、このように中の君を匂宮にお世話してしまったのだ。考えてみれば随分口惜しい話だ。お二人とも自分のものとしてお世話したところで悪口を言うような人もいなかったのに、今更取り返しのつかないことながら馬鹿なことをしたものだ」



 と自分ひとりの胸のうちで後悔して悩んでいる。


 匂宮は薫の君以上に中の君のことが心から離れたときはなく、ただもう恋しく気がかりでならない。



「お気に召している人があるならこちらへ召人として宮仕えさせて普通に気軽にお世話をなさい。帝はあなたを将来東宮にもとお考えでいらっしゃるのに、あなたには軽々しいお振舞があるよう、人がうわさするらしいのもとても残念でなりません」



 と中宮は明け暮れ戒めるのだった。

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