総角 その七十一
匂宮は帰り道すがら中の君のいじらしかった様子を思い出すと途中からもう引き返したくなってみっともないほど恋しくてたまらないのだが、世間の噂を憚って我慢して帰った。それからというもの、そうたやすくは抜け出して出かけたりはしない。手紙だけは毎日日に何度となく差し出している。
その様子で匂宮の気持ちは並々ではなさそうだと思うものの、来ない気がかりな日々が何日も積もるので、大君はこんな大変な気苦労を中の君にさせたくないと思ったのに、匂宮がこんな状態では自分のこと以上に辛いものだと嘆く。中の君がどれほどひどく悲しんでいることかと心配して強いてさりげないふりをして、
「せめて自分だけでもこんな恋だの結婚だのということで苦労を加えたくない」
とますます深く決心する。
薫の君も宇治ではさぞ匂宮の来るのを待ち遠しく思っているだろうと思やってこれも自分の過ちから起こったことだと責任を感じて気の毒に思い、匂宮に対しても絶えず伺って意見をしては顔色を探ってみると、匂宮は実に真剣に中の君に打ち込んでいる様子なので、子なら捨てることはないだろうと安心するのだった。
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