総角 その五十四

 匂宮からの手紙も大君が開いてみるが、中の君はいっこうに起き上って来ないので、



「お返事がとても遅くなります」



 と使いが困り切っていた。



 世のつねに思ひやすらむ露ふかき

 道の笹原わけて来つるも



 といかにも恋文を書きなれている筆跡が格別あでやかなのもこんなことになる前には何の気もなく見て、見事なものと感心していたのに、今朝はかえってそれが気がかりで、先々中の君が捨てられるようなことにならないかと大君は心配でならない。自分が差し出がましく代筆の返事を出すのも気がひけるので、こうしたときの返事の書きようなどを丁寧に教えながらしっかりと言い聞かせて中の君に返事を書かせるのだった。

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