総角 その四十三
この年頃、匂宮は宇治の姫君に執心のように言うが、薫の君は匂宮の目当ての中の君がどんな人だかわからなかったので心配していた。ところが器量も先夜見たところでは匂宮が失望することもなさそうに美しかったし、人柄も親しくなればどんなものかと危ぶんでいたのが実際にはすべての点で申し分なく思われる。
「匂宮の手引きをすれば先夜の大君の維持らしい内々のお心づもりに背くような形になるのもとても心苦しいけれど、だからといって大君の思い通りに自分の気持ちを中の君に切り替えることはとてもできないので、匂宮に中の君をお譲りしてどちらからも恨まれないようにしよう」
などと密かに思案している。匂宮はそうした薫の君の胸の内など知らず、薫の君を姉妹を独り占めにして狭い料簡だととっているのも面白いが、
「いつもの浮気っぽいお気持ちで近づかれ、姫君に辛い思いをさせるのではお可哀そうですからね」
など薫の君はまるで親代わりのように言う。匂宮は、
「ああ、いいですとも、まあ見ていてごらん。こんなに心惹かれたことはいまだかつてない経験ですよ」
とひどく真剣にいうのだった。
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