総角 その四十四
薫の君は、
「ところがあちらの姫君のほうでは本気になさらないでそう簡単になびきそうもない様子なのですよ。まったくこれは気骨の折れる御奉公というものですな」
と言って、宇治に来るときの注意などこまごまと教える。
八月の二十六日は彼岸明けの日で吉日だったので、薫の君は密かに気を配って匂宮をごくお忍びで宇治へ案内した。明石の中宮の耳にでも入ったらこうした忍び歩きは厳しく止められるので、本当に厄介なことだが匂宮がたっての執心なのでできるだけ目立たないようにとお世話するのも並大抵のことではない。
こちらから船で川を渡るなどという訪れ方も大げさなので、仰々しい宿なども借りず、八の宮の山荘のすぐ近くの薫の君の荘園の管理人の家にとてもひっそりと着き、車から匂宮をおろしてまず薫の君だけが出かけた。別に一行を見咎めるような人もいないのだが、宿直の人々が時々外を警護のため見回ることもあるので、匂宮の来た気配を気取られないようにとの用心からだろう。
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