総角 その四十二
まだ明けきらない暗い空は折悪く霧が立ち込め、冷え冷えとしている。月は霧に隔てられて木の下は暗くしっとりとした味わいが漂っていた。匂宮はその雰囲気から宇治の山里の身にしむ風情を思い出したのか、
「近いうちに置き去りにせず、必ず連れて行ってくださいよ」
と頼むのを、薫の君は相変わらず迷惑そうにするので、
女郎花咲ける大野をふせぎつつ
心せばやしめを結ふらむ
と冗談を言う。
霧ふかきあしたの原の女郎花
心を寄せて見る人ぞ見る
「簡単に逢わせられるものですか」
と薫の君は言い、口惜しがらせようとすると、匂宮は、
「うるさいことを言って」
としまいには本気で腹を立ててしまうのだった。
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