総角 その十一

 果物などをありあわせのようにさりげなく盛る。お供の人々にも気の利いた酒肴などを振舞う。この人たちは渡り廊下のようなところに集まっているので、薫の君は家来たちを遠ざけるような格好になってしんみりと大君と話している。大君はなかなか打ち解けようとはしないが、親しみやすく愛嬌のある物言いをする様子が薫の君には並々ならず気に入って切ないほど心が乱れてくるのも他愛もないことだった。


 こんなふうに間を隔ててはたいしたものではないのにもどかしく思いながら思いも遂げずいつまでもぐずぐずしている優柔不断さをあまりにも気の利かない馬鹿馬鹿しさだとしきりに焦っている。しかし表面はさりげなくみせてさまざまな世間話をしみじみしたり、また面白く上手に興味を引き立てるように話すのだった。

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