総角 その十二
御簾の内では姫君が女房たちに側近くに控えているように命じていたが、女房たちはそんなによそよそしい態度をとらなくてもと思っているらしく、それほど本気になって見張りもせずに皆引き下がって隅の方に横になってしまった。
仏前の前の灯明を明るく掻き立てる人さえいない。大君はなんとなく気味悪くてそっと女房を呼ぶが、誰も起きて来ない。大君は、
「気分が悪くなり苦しいものですから少し休みまして明け方にでもまたお話いたしましょう」
と言い、奥に入ろうとする。
「山路を踏み分けてはるばる参りました私はなおさら本当に苦しいのですが、こうしてお話申し上げたり伺ったりするだけでも慰められているのです。それなのにここに一人置き去りになさって奥に入っておしまいになりましたなら、どんなに心細いことでしょう」
と薫の君は言うなり、屏風をそっと押し開けてそのまま簾の中に入ってしまった。
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