椎本 その十二
薫の君はその秋、宰相の中将から中納言に昇進した。ますます立派になり、公務も多忙になるにつけても心の内の悩みは深まるばかりだった。どういういきさつがあったのかと憂鬱な気持ちのままずっときにかかっていたこれまでの長い歳月よりもそれとわかった今ではかえっていたわしい状態で亡くなった遠い昔の実の父の苦悩が思いやられ、何とかしてその罪障が少しでも軽くなるようにと勤行もしたいものと思った。
あの年老いた弁を不憫に思い、目立たないように何かにつけて人目をつくろいながら親切に面倒を見てやるのだった。
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