椎本 その十一
八の宮としてもかねて考えていたような理想通りの相手でなくても世間てもまあ恥ずかしくなくこれならと世間からも認められそうな身分で誠心誠意姫君を大切にしようと心を寄せてくれる男なら見て見ぬふりをして婿として迎えよう。二人の姫君それぞれが結婚するならその人に世話を頼むことにすれば一まず安心もできようかと考えるが、それほど深い気持ちで言い寄る人もいないのだった。
ごくまれにはちょっとした伝手を通じて色めいたことを言ってくる人もいるが、そんな連中はみなまだ若気の気まぐれから物詣の中宿りとか旅の道中のいいかげんな出来心で気をひくような素振りを見せるのだ。さすがにそうは言いながらもこのように落ちぶれて無聊なわびしい日々を過ごしている八の宮の様子などを想像して軽蔑したような態度に及ぶのにはいくら何でも無礼千万と思い、そうした連中にはろくに返事も書かせない。
そんな中で匂宮だけはやはり姫君たちを何としても手に入れたいという気持ちが深くなっている。前世からの因縁があったのだろうか。
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