橋姫 その九

 この八の宮は光源氏の弟だった。冷泉院がまだ東宮でいた時に朱雀院の母、弘徽殿の女御が陰謀を企んだのだ。東宮冷泉院を廃して八の宮を東宮に擁立しようと考え、自分の権勢に任せて何かと八の宮を持ち上げようとしたいきさつがあった。そのため光源氏が須磨、明石から京に帰って復権してからは心ならずも光源氏一門の付き合いからは見放されてしまった。


 その後は光源氏の子孫ばかりが次々と栄えている今のご時世なので、世間へ顔を出すことも憚られる。


 その上ここ数年はこうした出家同然の生活になりはててしまい、今はもうすべてをあきらめきって俗世での一切の望みは捨てているのだった。

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