橋姫 その八
お経を片手に持って読経しては、一方では姫君たちのために楽譜を歌ったりした。大君には琵琶を、中の君には筝のお琴の稽古をさせる。まだたどたどしいながらいつも合奏して稽古するので、それほど聞きにくくもなく、結構上手に弾いた。
八の宮は父帝にも母女御にも早く先立たれてしまい、しっかりした後見もこれといった人がいなかったので、学問なども深くは修めなかった。ましてこの世間をうまく渡る心構えなど、どうして知りようがあろうか。高貴な人と申し上げる人々の中でも呆れるほど気高くて鷹揚な女のような人柄でいるので、先祖伝来の宝物や母方の祖父大臣からの遺産や何やかやが無尽蔵と思われるほどだったが、今ではみんなどこへともなくうやむやのうちになくなってしまって手許の家具類ばかりがいかにも麗々しくたくさん残っているのだった。こちらへ参上して機嫌伺いをして好意を伝えようと思う人もいない。所在ないままに八の宮は音楽を司る雅樂寮の楽師たちなどといった音楽の上手な人達を呼び集めて、他愛もない管弦の遊びに心を打ちこんで成長したので、音楽にかけては腕前はとても熟練して上手でいるのだった。
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