竹河 その六十一

 左大臣が亡くなって夕霧の右大臣が左大臣に、按察使の藤大納言が左大将兼任の右大臣になった。それより以下の人々も順次昇進して薫中将は中納言に、三位の中将は宰相になって昇進のお祝いをしたが、誰もこの一族の人々ばかりで他に人はいないといった権勢だった。


 薫の君は中納言昇進の挨拶に玉鬘の君の邸に来た。庭前で拝舞をする。玉鬘の君は対面して、



「こんな人も訪れない草深いあばら屋を素通りもなさらずお訪ねくださった心遣いにもまず昔のことが思い出されてなりません」



 などと言う声も気品があって愛嬌もあり、この上なく華やかだった。



「少しも老けていらっしゃらないのだな、こうだから冷泉院はおあきらめになれないのだろう。そのうちに院はきっと何か事をお起こしになるにちがいない」



 と薫の君は思うのだった。

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