竹河 その四十二

 手にかくるものにしあらば藤の花

 松よりまさる色を見ましや




 と言い、藤の花を見上げている薫の君の様子など藤侍従には不思議なほどもの悲しく見え、気の毒でならない。今度のことは自分としてはどうしようもない結果だったのだとほのめかして言い訳する。




 紫の色はかよへど藤の花

 心にえこそかからざりけれ




 と言って真面目な人柄なので、薫の君にすっかり同情している。薫の君はそれほどひどく取り乱すほど深い思いでもなかったとはいえ、やはり残念に思っている。


 あの蔵人の少将の方はと言えば、一途に思いつめてどうしたらいいだろうかと無分別なこともしかねないほど気持ちを静めきれず苦しんで悩んでいるのだった。

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