竹河 その四十三
大君に求婚していた人の中には今となっては中の君をと気持ちを移す人もいる。ところがこの少将は玉鬘の君が雲居の雁からの恨みを聞いていたので、代わりに中の君をとそれとなく言ったのに、あれっきり何の音沙汰もなくなってしまった。
冷泉院には夕霧の大臣の息子たちも以前から親しく仕えていたが大君が院参してからは蔵人の少将はばったり来ず、ごくまれに冷泉院の殿上のほうに顔を出しても味気なさそうにすぐ逃げるように退出してしまった。
帝は亡き髭黒の太政大臣が大君の入内を格別熱心に望んでいたのにこんなふうにその遺志に反して院へ上がってしまったことをいったいどうしてなのかと思い、大君の兄の左近の中将を呼び、事情を尋ねる。中将は玉鬘の君に、
「帝の御機嫌が悪ようです。だからやはり世間の人だって今度のことを内心変だと思うに違いないと前々から私は意見していたのに、母上のお考えはまた別で、こんなふうに決心なさったのですから、もはやあれこれ申し上げたくはありませんが、こうした帝のお言葉がございますと私どもの身のためにも困ったことでございます」
とはなはだ不服な様子で文句を言うのだった。
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