竹河 その二十二

「この桜が老木になってしまったにつけても、過ぎ去った年月の長さがわかりますが、その間にたくさんの人々に先立たれてしまって、残された自分の悲しさも話し出せばきりがありません」



 など泣いたり笑ったりしながら話して、いつもよりはゆったりとしている。今は他家の婿になってこちらへはゆっくりとも出かけないのに、今日は花に心惹かれて落ち着いている。


 玉鬘の君はこうした立派に成人した方々の親になった年にしてはとても若く美しくて、まだまだ女盛りの容姿のように見受けられる。冷泉院は実はこの人のことが今も忘れられなくて、昔のことが恋しく思い出すので、何かにかこつけてもう一度会いたいと思案を巡らし、大君の宮仕えのことを一途に所望するのだった。

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