竹河 その十

 玉鬘は、



「ところがその女御様が、院がご退位後はお暇で退屈を持てあましていらっしゃるから、私の娘を院とご一緒に面倒を見て、気晴らしをなさりたいなどとあちらからお勧めくださいましたので、私もついどうしたものかと考えてみるようになったのです」



 と話した。


 誰彼となく、この邸に集まった人々はここから三条の宮邸に参上する。朱雀院に昔のままに心を寄せている人々や、六条の院に関係のある人々はそれぞれの縁故で今もやはりこの女三の宮の邸を素通りはできず、訪ねるようだった。玉鬘の子息の左近の中将、右中弁、侍従の君などもそのまま夕霧の右大臣のお供をして出かける。人々を引き連れた夕霧の右大臣の威勢はなかなか盛大なものだった。


 夕暮になって四位の侍従薫の君が、玉鬘邸に来た。先に大勢見えていた若い公達の誰も皆それぞれ立派で、誰もが見劣りなどしない。皆美しい人々ばかりだった。その中に、一足遅れて姿を見せた薫の君は本当にたまらないほど目を奪われるようで、例によってすぐ夢中になる若い女房たちは、



「やはり他の人とは違っていらっしゃるわね」



 など話し合っているのだった。

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