竹河 その九

 玉鬘は、



「今はもうこうして年をとり、世間の数にも入らないように落ちぶれていくありさまですのに、人並みにお扱いくださいますので、亡き光源氏のことがますます忘れがたく偲ばれます」



 と言うついでに、冷泉院寄りの長女の大君への求婚のことをそれとなくほのめかすのだった。



「しっかりした後見人もなくて宮仕えすることはかえって見苦しいことにもなりますから、あれこれ思い悩んでおります」



 と話すと、夕霧の右大臣は、



「帝からもご所望の御内意がおありだとか承っていますが、どちらにお決めになるのがよろしいのでしょう。冷泉院は確かに退位あそばしている点ではもはや全盛のときを過ぎた感じですけれど、世にまたとないお美しい御容姿はいつまでもお若くていらっしゃるようですからもし私にも人並みに育った娘がおりましたならと思いつきながらもお歴々のお妃たちの中にお仲間入りできるような娘がおりませんので、残念に思っていました。それにしてもいったい女一の宮の母女御はこの縁組をお許しになられるでしょうか。前にも院に娘を宮仕えさせようとした人々もそちらへの遠慮で取りやめたようですよ」



 と言うのだった。

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