紅梅 その十五

 翌朝、この若君が退出するときに気乗りしないようなお座なりな詠みぶりで、




 花の香にさそはれぬべき身なりせば

 風のたよりを過ぐさましやは




 と返事を書いて、



「やはり今のところは何とか年寄りたちに余計なおせっかいをさせないで、あなたがこっそり、上手にね」



 と何度も繰り返し言うので、若君も宮の姫君は高貴な人とますます慕わしく好意を寄せるのだった。


 かえって腹違いの姫君たちは若君に姿を見せたりして、普通の兄弟のようだが、子供心にも宮の姫君がいかにも重々しく、申し分のない性質でいるので、何とかして立派な結婚をするのを見てみたいものだと常々思っているのだった。

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