紅梅 その十六
東宮の女御が、今を時めくとてもはなやかな威勢なのを見るにつけても、姉の出世ということでは同じことだとは思いながらも、宮の姫君がまだ一人でいるのが本当に残念でならないので、せめてこの匂宮だけでも何とかして宮の姫君の婿になってもらいたいと思い続けていたところだったので、若君はこの花の便りの使いを格別うれしく思ったのだった。
さて、匂宮からの歌は昨日の返事なので、大納言に見せる。大納言は、
「うれしいおっしゃりようだね。匂宮はあまり色恋沙汰の度が過ぎていらっしゃるので、我々が困ったことだととやかく申し上げていることをお耳にされて、夕霧の右大臣や私の前ではとても生真面目に謹厳そうなふりをしていらっしゃるのがおかしい。浮気者の資格十分な人なのに、無理に堅物ぶって見せていらっしゃるのも、はた目にはかえって興をそがれるというものだろう」
などと陰口をたたいて、今日も参内するのに、また大納言は、
本つ香のにほへる君が袖ふれば
花もえならなぬ名をや散らさむ
「色めいた申し上げようで。あなかしこ」
と昨日よりも真剣に熱意のこもった手紙を書くのだった。
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