紅梅 その七
大納言はどの姫君に対しても分け隔てなく父親らしく振舞っているが、宮の姫君の器量を見たいものだと心をそそられて、
「私に隠れてばかりいるのが情けない」
と恨んでいる。そっと姿が見られはしないかとあちらこちらから覗いてみるが、まるでちらとも姿を見ることができない。
「母上がお留守の間は、母上の代わりに私がお伺いしなければなりませんのに、よそよそしく母上とは分け隔てなさり、私をおさけになる様子なのが情けないことです」
などと言い、御簾の前に座ると、宮の姫君は本の少しだけ返事をする。その声や気配などが気品があり優雅で、器量や姿までさぞかしと思いやられて、心が惹かれる宮の姫君の様子だ。
大納言は自身の姫君たちを誰にも負けないほど優れていると内心自慢に思っていたが、
「この宮の姫君にはとてもかなわないのではないだろうか。こうしたこともあるからこの広い世間ではまったく気が許せないのだ。絶世の美人と思っていてもそれよりさらにすぐれた美女だっていないとも限らないのだから」
などと気が揉めてますますこの宮の姫君の顔を見たいと思うのだった。
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