紅梅 その六

 東の部屋の宮の姫君も、これまでこちらの姫君たちとはお互いに仲良く付き合って、夜などもよく同じ部屋で眠り、いろいろな稽古ごとを一緒に習ったり、ちょっとした遊びごとでもこの宮の姫君は一の姫君と中の姫君の二人から師匠のように慕われて、一緒に習ったり遊んだりしていた。


 宮の姫君は人並み外れて人見知りする人で、母君とさえめったにはっきりとは顔を合わせることもなく、みっともないほど控えめにするのだが、決して陰気な性質ではなくて、愛嬌もあり魅力的な点では誰よりも勝っている。


 こうして大納言は一の姫君の東宮入内や何やかやと自分の実の娘のことばかりで奔走しているようなのも心苦しいと思い、北の方に、



「宮の姫君に適当な結婚相手をお決めになって、私に相談してください。実の娘と同じように思ってお世話しますから」



 と話すが、北の方は、



「あの娘はまるでそうした世間並みの結婚など考えてもいない様子なので、なまじっかな縁組ではかえって可哀そうでしょう。もって生まれた運に任せて、私の生きております間は何とかお世話しようと思っています。私の死んだあとが可愛そうで心配ですけれど、出家して尼になるなりしてそれなりに人から物笑いにされるような軽はずみな過ちはなしに、過ごされるようにと願っております」



 などと泣きながらこの姫君の性質の申し分ないことを大納言に話すのだった。

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