紅梅 その五
「后は藤原氏から立てるようにとの春日明神の宣託も、もしや自分の代で実現することができたらどんなにいいか。そうなれば亡父の前太政大臣が冷泉院に差し上げた娘の弘徽殿の女御が秋好む中宮に圧されてとうとう立后できなかったことを無念のままに終えられた、その口惜しさを晴らして差し上げられることになる」
と、心中密かに祈り、姫君を東宮に差し上げることになった。御局の麗景殿に賜り、東宮の寵愛がとても深い様子を、人々が大納言に報告する。
姫君はこうした宮中の付き合いには慣れていないので、しっかりした後見役がなくてはどうかと心配になり、真木柱の北の方が付き添って一緒に参内して、この上なく気配りして懸命に世話した。
大納言はこうして北の方や一の姫君が留守のために所在ない気持ちでいる。西の部屋の中の姫君も姉君といつも一緒にいたので、とても寂しくてぼんやり物思いに沈んでいるのだった。
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