匂宮 その六

 冷泉院の御殿の傍の対を中将の部屋として整え、冷泉院自身で部屋飾りなどもいちいち指図する。若い女房や童や下仕えの者まで容姿の優れたものを選び、姫宮の世話をする儀式よりも煌びやかに立派にするのだった。


 冷泉院や秋好む中宮に仕えている女房の中で器量がよく、上品で難のない者はみんなこちらに移した。中将の君がこの冷泉院の住まいを快適だと気に入り、喜んで住むようにとひたすら気を遣い、わざとがましいほど特別に世話をしなければならない人と思っている。


 亡くなった前の大臣の姫君で、冷泉院の弘徽殿の女御という人が生んだ姫宮がこの中将の君に対してはそれにも劣らない気に入りようだ。秋好む中宮への冷泉院の寵愛が歳月とともに深くなっているので、実子のない秋好む中宮の将来のために、この中将の君を格別寵愛するのだろう。それにしてもこうまでしなくともと思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る