匂宮 その七
中将の君の母君は、今はただ御仏への勤行ばかりを心静かにして、月ごとにある念仏会、一年に二度ある法華八講の法会をはじめ、折々の尊い仏事を営むばかりで、所在なく暮らしている。尼宮は中将の君が三条の宮邸に出入りするのをかえって親のように頼りにするので、とてもいたわしくて中将の君は度々訪ねていた。
冷泉院からも帝からも始終お召しがあり、東宮をはじめ、二の宮、三の宮たちも親しい遊び友達としていつも一緒にと誘いがあるので、中将の君は忙しくてまったく暇がなく苦しいので何とかして体が二つにならないものかと思った。
自分の素性について幼い頃、ぼんやり耳にしたことが折に触れて不審に思い、ずっとどういうことかと気にかかっているのだが、それを問いただす人もいない。母は自分がほんの少しでもその秘密に感づいていると気づくと、さぞ気が引けることだろうと思い、他拗ねることもできず、それ以来ずっと心にかかっているのだった。
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