御法 その三十
しっかりした心もなくなり、我ながらことのほかに正体もなく呆けてしまっていると自覚することが多いので、光源氏はそれを紛らわすために女房たちの部屋で過ごしていた。
仏前にはあまり大勢の女房たちを控えさせないようにして心静かに勤行をする。紫の上と千年ももろともにと願っていたのに、定められた命の別れにあったのが、何とも無念なことだった。今では極楽浄土で紫の上と一つの蓮台の上に生まれたいという願いが他の俗事で邪魔されることもなく、後生のため一途に出家を思い立つ気持ちには揺るぎもない。しかしまだ世間の噂を気兼ねしているのがどうも情けないことだった。
七日毎の法事のことなども光源氏はてきぱきと取り決めたり命じたりすることもなかったので、夕霧がすべて引き受けて世話した。悲しみのあまりもう今日こそは今日こそはと出家の覚悟をされるときも少なくなかったのだが、いつの間にかそのまま月日が過ぎ去ってしまったことも夢のような気持ちでいる。
明石の中宮なども紫の上を忘れるときもなく、いつも絶えず恋懐かしんでいるのだった。
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