御法 その二十四
夕霧も紫の上の御忌みのためそのまま二条の院に籠り、ほんのわずかの間も自分の邸に退出しない。明け暮れ光源氏の側に仕えてあまりな悲嘆に打ち沈んでいるいたわしい様子をごもっともなことと悲しく見て何かにつけて慰めている。
風が野分めいて吹く夕暮に夕霧は昔の野分の日のことを思い出し、紫の上の姿をほのかに見たことがあったものをとその面影を恋しく思うにつけ、また臨終のときの顔を見て夢のような気持ちがしたことなど、人知れずひそかに思い続けていると、耐え難く悲しくなるのだった。一目にはそんなふうに悲しがっている様子は見られてはならないと気遣って、
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
と数珠の珠を繰りながら念仏を数えるように紛らわしてようやく涙を隠しているのだった。
いにしへの秋の夕のこひしきに
いまはと見えし明けぐれの夢
その夢のような姿の名残さえ、今は悲しくてならない。
夕霧は尊い高僧たちを何人も奉仕させて四十九日の間の決まりの念仏行はもとより、法華経などの読経もさせる。そうしたあれもこれもがとても身に染みて悲しいことばかりなのだった。
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