御法 その二十五
寝ても覚めても涙の乾く暇もなく、光源氏は目も涙でかすんだまま明かし暮らしている。昔から自分の身の上をずっと思い返すと、
「鏡に映ったこの顔をはじめとして普通の人とは違って何もかも優れていた自分だけれど、幼いときから母や祖母の死に目にあい、悲しい無常の人の世を悟るようにと仏が教えてくださったのに気づかぬふりをして強情に過ごしてきた。そのあげくついに過去にも将来にも例がないだろうと思われるほどの悲しい目にあったことだ。今はもうこの世に何の心残りもなくなってしまった。一筋に仏道の修行を志すにも何のさし障りもないはずだ。しかし、こんなふうにとり静めようもなく悲しみに惑乱していては念願の仏道にもなかなか入れないのではないだろうか」
といっそう悔やみ悩むので、
「どうかこのつらい思いをいくらでもゆるめて忘れさせてください」
と阿弥陀仏に祈願しているのだった。
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