御法 その十九

 夕霧は、



「物の怪などがこれも人の心をかき乱そうとしてよくこんなことになるようでございますから、この紫の上のご様子もあるいはそんなことかもしれません。そうだとすればいずれにしましても御出家なさることは結構なことでございます。たとえ一日一夜でも戒をお受けになればその効験は必ずあると聞いております。しかし本当にもうこときれておしまいになられてからお髪だけをお下ろしになられても今生とはまったく別な後生のための功徳の光とも格別ならないでしょうに。むしろそのお姿によって残された私たちの悲しさばかりが増すように思われます。さていかがなものでございましょう」



 と言い、死後の籠りに奉仕しようとして退出せずに残っているあの人やこの人を呼び寄せて必要なあれこれなどを取り仕切って命じるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る