夕霧 その一〇三

 女二の宮は単衣の着物を髪の上からひきかぶって、ただもうひたすら声をあげて泣くばかりだ。そんな姿が慎み深くもあり、いじらしいので夕霧は、



「本当に情けない。どうしてこんなにまでお思いつめになるのだろう。どんなに意志の強い人だってここまで追い詰めてしまえば自然に決心も緩んでくるものなのに、岩木にもましてまだ強く反抗なさるとは。前世の縁が薄いとこの世で相手に憎しみを感じるとか言うけれど、女二の宮もそんなお気持ちなのだろうか」



 と思いあぐね、あまりといえばつくづく気が滅入って、今頃三条の邸では雲居の雁がどんなに悲しんでいるだろうと思いやる。昔、他愛もなく幼心に愛し合っていて頃のことや、この年月、もう大丈夫とすっかり安心しきって無邪気に自分を信じ切って打ち解けていた様子などを考えるにつけても夫婦の仲がこじれてしまったのも、みんな自分の心がけのせいなのだととても味気なく次から次へと思うので、もう無理に女二の宮の機嫌をとろうともせずに嘆き明かしたのだった。

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