夕霧 その一〇二
女二の宮はあまりにも呆れ果てた恨めしいことをすると、側の女房たちのことも恨んだ。なるほどこれが世間の人の心というものだとすれば、これからだって女房たちからもっとひどい目に遭わされるに違いないと思い、こんな女房たち以外、頼りにできる誰もいなくなってしまった自分の境遇を返す返す悲しく思った。
夕霧は何かと女二の宮が得心するようにさまざまの道理を話す。さも哀れっぽく訴えたり興味をひくように持ち掛けたり最後まで言葉を尽くして聞かせるが、女二の宮はひたすら夕霧を恨めしく疎ましい人だとばかり思っていた。夕霧は、
「こうして何とも言いようもないほど嫌ない男だと女二の宮に思われてしまったこの自分がたとえようもなく恥ずかしいのです。女二の宮に恋するなどというとんでもない料簡がいつの間にかついてしまったのを無分別なことだったと悔やんではおりますが、すでに噂が立ってしまい取り返しもつかない上は、今更潔白だという名誉の挽回はできないのです。それもどれほど立派な名があったというのでしょう。思うようにならない時は人は淵川に身投げをする例だってあると言いますが、私のこの深い愛をどうか淵とお考えになってその淵に身を投げてしまったとお思いください」
と言うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます