夕霧 その一〇二

 女二の宮はあまりにも呆れ果てた恨めしいことをすると、側の女房たちのことも恨んだ。なるほどこれが世間の人の心というものだとすれば、これからだって女房たちからもっとひどい目に遭わされるに違いないと思い、こんな女房たち以外、頼りにできる誰もいなくなってしまった自分の境遇を返す返す悲しく思った。


 夕霧は何かと女二の宮が得心するようにさまざまの道理を話す。さも哀れっぽく訴えたり興味をひくように持ち掛けたり最後まで言葉を尽くして聞かせるが、女二の宮はひたすら夕霧を恨めしく疎ましい人だとばかり思っていた。夕霧は、



「こうして何とも言いようもないほど嫌ない男だと女二の宮に思われてしまったこの自分がたとえようもなく恥ずかしいのです。女二の宮に恋するなどというとんでもない料簡がいつの間にかついてしまったのを無分別なことだったと悔やんではおりますが、すでに噂が立ってしまい取り返しもつかない上は、今更潔白だという名誉の挽回はできないのです。それもどれほど立派な名があったというのでしょう。思うようにならない時は人は淵川に身投げをする例だってあると言いますが、私のこの深い愛をどうか淵とお考えになってその淵に身を投げてしまったとお思いください」



 と言うのだった。

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