夕霧 その一〇四
いつもこんなふうに不首尾のままいかにも間抜け者のようにこの邸に出入りするのもみっともないものなので、今日はこちらに泊まったままゆっくりする。
女二の宮は夕霧がこうまでひたむきなことをするのを何ということかと呆れてしまい、ますます疎ましく思っている様子だ。夕霧のほうは愚かしいにもほどがある、どこまで意地っ張りな人かと恨めしく思うものの、またそんな女二の宮が一方では不憫にもなるのだった。
塗籠の中には別にこまごました調度などはほとんどなく、香の唐櫃や厨子などくらいが置いてあるのをあちらこちらに片づけて間に合わせの御座所が作られた。内は暗いのだが、もう夜が明けたらしく、陽の光がほのかに隙間から洩れてきたので、夕霧は女二の宮の被っている着物を引きのけ、見苦しいほど乱れて顔にまつわっている髪をやさしく掻き上げたりしてほのかに顔を見るのだった。いかにも気品が高い上、女らしくあでやかな人でいる。
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