夕霧 その四十四
夕霧はほかのことは何も考えられず、御息所に早く返事したいと思うが、昨夜の手紙の内容もはっきり読めずじまいなので、見当違いな返事を書けば手紙をなくしたのだと思われるだろうなどとあれこれ悩んでいる。
誰もみな食事を済ませてやっと静かになった昼頃、思いあぐねた末、困り切って夕霧は、
「昨夜のお手紙はどんな内容だったのです。怪しからんことに見せてくださらないので困ってしまう。今日もお見舞いに行かなければならないのに。私は気分が悪いから六条の院にも参上できそうもないので、お見舞いの手紙を差し上げようと思います。あれを見ないでは書けないのです。いったい何と書いてあったのですか」
と言ったが、いかにも何気ない言い方なので雲居の雁は手紙を取り上げたりしたのは本当に馬鹿な真似をしたものだと決まりが悪くなって手紙のことにはわざと一切触れようとしないのだった。
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