夕霧 その三十五
御息所は病気で苦しい中にも女二の宮を迎えて、ひとかたならず恭しくもてなした。病気中にもかかわらず、いつもの作法通りに起き上って、
「とても取り散らかしておりますので、お越しいただくのも心苦しゅうございます。この二、三日ほどお目にかかりません間が、まるで長い年月お会いしなかったように思われますのも、思えばつくづくはかないことでございます。死んでもあの世できっとお目にかかれるとは限りません。またもし生まれ変わりましても、前世のことは覚えているかどうか、頼りないことでございます。考えてみればたちまちの間に死別しなければならないこの世で、これまで親子としてあまりにも睦まじく愛し合って過ごしましたのが、今となってはかえって悔やまれるばかりです」
などと泣く。
女二の宮も悲しいことばかりがどっと胸にこみあげてきて何も言えずにただ御息所の顔を眺めているのだった。
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