横笛 その二十一

 夕霧は笑って、



「変な言いがかりをつけるものだね。私が物の怪の手引きをしたなんて。なるほど私が格子をあげなかったら道がなくて確かに入ってこられなかっただろうよ。大勢のお子の母親になられるにつれてずいぶん考えが深くなって、立派なことをおっしゃるようになられたものだ」



 とちらっと流し目になる夕霧のその眼つきが雲居の雁にはきまりが悪いので、さすがにもう何も言わず、



「あちらへ行ってくださいな。みっともないなりをしていますから」



 と明るい灯影を、ああは言っても恥ずかしそうにしている様子も、さすがに悪くない。本当にこの若君は物の怪のせいかぐずぐず苦しがって一晩中泣きむずかりながら夜を明かすのだった。

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