横笛 その二十
この若君はひどく泣き、乳を吐いたりしたので乳母も起きて騒ぎ、雲居の雁も灯火を側に取り寄せて額髪を耳に挟みこみ、忙しそうに世話をして、抱いて座っている。よく肥えてむっちりとしたきれいな胸をはだけて乳を含ませている幼い若君もとても可愛らしくて色白のいかにもきれいな子だ。雲居の雁の乳はすっかり上がっているのだが、気休めに含ませている。夕霧も寄ってきて、
「どうしたの」
など聞く。魔よけの米を辺りにいっぱいまき散らしたりして騒々しいのでさっきの夢の哀れさもどこかへ消し飛んでしまった。
「この子はとても苦しそうですわ。あなたがまるで近頃若い人のように浮ついてふらふら出歩いているばかりか夜中のお月見とやらで格子まで上げたりなさったからお決まりの物の怪が入ってきたのでしょうよ」
など、雲居の雁はとても若々しい愛らしい顔で愚痴を言うのだった。
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