横笛 その十二

 夕霧は、



「それは本当にごもっともなお悲しみです。せめて物思いにもこれまでという限度があるものでしたら」



 とつらそうな表情で和琴を御息所のほうへ押しやったので、御息所は、



「そうお思いならやはりそのお琴をあなたがお弾きになって、お琴に亡きお方の音色が伝わっているかどうかこの私にも聞き分けさせてくださいませ。うっとうしくふさぎこんでおります私の耳だけでも少しははっきりさせましょう」



 と言う。



「柏木の音色がそのように伝わるお琴はやはりご夫婦でいらした女二の宮さまがお弾きになればこそ格別にも響きもいたしましょう。それをぜひお聞かせ願いたいものです」



 と言って、夕霧は和琴を御簾の近くに押しやったが、女二の宮がすぐに弾きそうもないので、それ以上は無理には言わないのだった。

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