柏木 その五十一
夕霧もすぐには心を静めることができず、
「あの柏木は不思議なほど、すべてにこの上なく老成していらっしゃいましたが、それもこんなに早死になさる運命だったからでしょうか。この二、三年来はひどく鬱々と悩みありげに沈んでいられて心細そうに見えました。あまり世の中の道理を知りすぎて考え深くなってしまった人は悟ってなまじ心境が澄みすぎ、そういうふうになると素直さがなくなってかえってその人らしいいきいきした好さが見えなくなってしまうのではないかと至らない考えのまま終始忠告していたのです。柏木はそんな私を思慮の浅い人間だとお思いのようでした。そんなことよりもお言葉のようにこの女二の宮が人一倍愁傷でいらっしゃるお心の内は畏れ多いことながら本当にお気の毒でなりません」
などとやさしく懇切に慰めになっていつもよりゆっくりお話ししてから帰ったのだった。
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