柏木 その四十九
夕霧は水際立って見え、気品高い中にもやさしく優雅な風情がある。
御息所も鼻声になり、
「死別の悲しみは無常の世の習いでございましょう。どんなに辛く悲しくても他にまた世間に例のないことではなかろうと年寄りの私などは無理にも気を強くしてあきらめようといたします。でもまだお若い女の二の宮がすっかり悲しみに沈み切っておいでになられる様子は本当に不吉なほどですぐにもお跡を追われそうに見えますので、何かにつけて悲しいことの多かった不運な私がこれまで生き永らえたあげく、こうしてあれやこれやと憂き目を見るようなはかない世の末の有り様を目にして過ごさなければならないのだろうかと本当に気もそぞろに嘆くばかりでございます。あなたさまと亡きお人とはずいぶんお親しくしていらっしゃいましたので、何かと生前お聞き及びになられたこともございましょう。私としましては、初めからこの御縁談にはあまり気が進んでいなかったのですが、前の大臣のご熱心なご所望をお断りするのも心苦しくて、朱雀院もこの縁組みをほどほどの縁と思い召されてお許しになるような意向がうかがわれたので、それでは私の考えが至らなかったのかと考え直しまして、あの方を婿君としてお迎えして、お世話を申し上げたのでございました」
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