柏木 その四十七

 そんなある日の昼頃だった。前駆の人々の先払いの声も賑やかに門の前に車を止めた人がいる。



「まあ、まるで殿のおいでかとついお亡くなりになったことも忘れてそう思ってしまいましたわ」



 と言って泣き出す女房もいた。


 それは夕霧が来たのだった。夕霧はまず案内を請うた。内ではいつも来る弟の弁の君や宰相の君が来たのだとばかり思ったのに、まったく気恥ずかしくなるほど立派な夕霧がすっきりと美しい姿で入ってくる。


 母屋の廂の間に御座所を設けて迎える。普通一般の客と同じように女房たちが相手をするのはいかにも失礼な感じがするほど堂々とした立派な様子なので母君の御息所が会うのだった。

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