柏木 その九

 その夜は一晩中陣痛に苦しんだまま朝を迎え、朝日がさし上る頃に子が生まれた。男だと聞くにつけても光源氏は、



「こうしてあの件は秘密にしているのに男の子ならあいにくあの男と生き写しの顔で生まれていたとすればこまったものだ。女の子なら何かごまかせて多くの人に顔を見られることもないから安心なのに」



 と思う一方、



「しかしまたこんなに辛く気掛かりな疑いのつきまとう子なら世話のかからない男の子が生まれて実際よかったのかもしれない。それにつけても不思議なことだ。今度のことは自分の生涯を通じて恐ろしく思ってきた秘密の罪業の報いなのだろう。この現世でこうした思いがけない報いに出会ったので、後の世で受ける罪も少しは軽くなるかもしれない」



 と思う。


 周囲の人々はそんな事情はまったく知らないので、このようにとりわけ高貴な人から、しかも晩年になって男の子が生まれたため若君への寵愛は格別すばらしいに違いないと心を込めて仕えるのだった。

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