柏木 その七
小侍従は女三の宮も何かにつけてただもう後ろめたく肩身の狭い思いで遠慮がちにしている様子を柏木に話すのだった。そんなふうにふさぎこんでしおれきり、面やつれている様子が瞼にありあり浮かぶように想像されるので、確かにこの身からさ迷い出た魂が恋しいあの人のところに度々行き通っているのだろうかなどと思って苦しい気分もますます激しく乱れるので、
「もう今となっては女三の宮のことは決して一言も口にすまい。あの人との恋はこんなに儚く過ぎてしまったけれど、女三の宮への妄執が未来永劫、成仏の障りになるかもしれないと思うと、せめてお聞きしてからあの世に行きたいものだ。あのとき私の見た夢を自分の心の中だけでやはり懐妊のことだったのかと思い当たっていながら他に打ち明ける人もいないのがたまらなく切なく胸が塞がる」
など、いろいろなことをとり集めてひどく思いつめている愛執の深さを小侍従は一方ではおぞましく恐ろしいようにも思うけれど、それはそれでさすがに気の毒さが込み上げてこらえきれず、一緒にひどく泣くのだった。
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