若菜 その二八六

 ああした手紙を見たともはっきり言わないのに女三の宮がひとりでとても苦しみ困りきっているのも光源氏にはいかにも幼稚で愚かしく見える。



「まったくこんなふうなお人柄でいらっしゃるからああしたことも起こるのだ。いくら鷹揚なのがいいとはいっても、あまりにも頼りなく思慮が足りないのは安心ができず困ったものだ」



 と考えると、男女の仲というものがすべて気がかりになる。



「明石の女御があまりにも素直すぎておっとりしているのも、柏木のように恋する男が現われたらこの場合以上に夢中になって心を狂わせるかもしれない。女というものはこの女三の宮ように内気一方で頼りなくなよなよしているとを男も甘く見るせいだろうか、あってはならないことながらふと見てしまうと女のほうも心の弱さから拒めず過ちを犯してしまうことになるのだ」



 と考えるのだった。

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