若菜 その二八四

「そういえばあの人はもともとしっとりと奥ゆかしい様子は初めからお見えにならなかった。第一、あの御簾の隙間から自分に見られておしまいになったのからして、あってはならないことなのだ。あのとき一緒に夕霧も軽々しい態度と感じていられたようだったが」



 などと今になって思わされるのだった。強いて女三の宮への恋の思いをさまそうと思って無理に欠点を探したいのだろうか。



「どれほど高貴な人と言ってもあまり極端におっとりとして上品一方なのは世間のことにもうとく、またお仕えする女房たちに用心もなさらないので、こうしてお気の毒な自分のためにも相手にとっても一大事になることを引き起こしてしまわれるのだ」



 とやはり女三の宮がいたわしくてあきらめる気持ちにはなれないのだった。

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