若菜 その二八三

「この長い年月、何かの公の用向きにも遊び事にもお側近くに召され、親しくお伺いするのが習わしになっていて、誰よりもこまやかにお目をかけてくださった光源氏様のお気持ちがいつも心からありがたく身にしみていた。それなのに呆れ果てた不届き者として憎まれてしまってはどうしてこれからお顔を合わすことができようか。そうは言っても、急にご無沙汰してしまってちらりともあちらへ参上しなくなってしまうのも人が不審に思うだろうし、光源氏様のお心にもやはりそうだったのかとお思いあたりになるだろう。それが溜まらない辛い」



 など不安にさいなまれているうちに気分もひどく悪くなって宮中へも参上しない。それほど重罪に当たるというものでもないとしても、これでもう自分の一生は破滅してしまったという気持ちがするので、やはりこんな結果になると考えないでもなかったのにと一方では自分でこんなことをした自分の心がひどく恨めしく思うのだった。

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